本学の地(知)の利を生かし、斐伊川流域や三瓶山で野外実習を行います。ここには、森林、土壌、汽水域といった生態系サービス(自然の恵み)、農地や地域資源の保全と持続的利用、河川構造物や水処理施設といった要素が揃っており、環境共生型社会を構築する対象地域として絶好のフィールドです。野外調査に加えて大学キャンパス内でも様々な実習を行います。 Read More






私たちの使命
環境共生科学科(Environmental and Sustainability Sciences)は、 ”土・水・生物などの資源と環境を適切に保全・管理しつつ持続的に利用していく環境調和型社会の構築” を掲げています。SDGsへの取り組みを進め、持続可能な環境共生型社会を実現させる研究や人材育成を加速させます。
地域の総合大学として、その特性を活かした質の高い大学教育を提供する。 幅広い学問領域をもつ地域の総合大学として、その知的資源を最大限活用した多様で質の高い教育を保証すると共に、 各学部・研究科の「ここにしかない学び」(独自性のある教育プログラム)を提供する。
SDGsの観点からカリキュラムを見直すと共に、授業科目とSDGsとの関連付けを明確化し シラバスに記載するなど、授業内容のSDGsへの関連について学生の理解を深めると共に、SDGsに対する意識を向上させる。
環境共生科学科には、SDGsに関係した研究を行っている研究者が多くいます。研究内容は11個のSDGsを含む6つの柱に分類されます。 プロジェクト"SDGs@ESS"により、本学の環境関係の研究者が連携し、相互の研究内容を融合させてSDGsの達成を目指します。
What kind of researches we have.
food resources
安全な食料を生産し、飢餓をなくす
safe water
いのちに必要な水
energy and life
エネルギーと生活
climate change
気候変動に具体的な対策を
sea, river, lake
海、川、湖の環境を守る
forest and plain
森林と平野
生物資源科学部 教授 増永 二之
土壌は植物の生産だけでなく水の浄化保持等を通じて環境を保全しています。しかし、岩石の種類・気候条件・地形・生物活動等の影響を受けて世界には多種多様な土壌があり、全ての土壌が同じ植物生産や環境浄化能力を持つ訳ではありません。また、人口増加に伴う森林伐採や過耕作、不適当なかんがいによる塩類集積その他、様々な理由で土壌の劣化が進み、その機能は低下してきています。土壌の機能を維持・改善する事無くして、食料生産や環境保全は維持・向上できないのです。
私の研究室では、国内外の企業や大学、研究機関と連携して各地域で土を調べて、その機能の改善方法を研究しています。肥沃度や養分の保持能力、保水・透水性などの項目を調べて、食料生産向上や劣化土壌回復のための課題を見つけその改善方法について検討・試行する他、インドネシアではケイ酸肥料の現地生産についても検討しています。前出の写真は、土壌侵食防止と農林業生産を両立するための研究現場であるエチオピア高地の様子です。土壌には汚水浄化機能もあり、その機能を制御強化した汚水処理技術(多段土壌層法)の研究も行い、国内での活用の他(例:写真上)海外への技術移転も行っています。
生物資源科学部 教授 井藤 和人
植物の中には植物内生菌と呼ばれている微生物がたくさん住んでいることが知られていています。マメ科の植物に根粒を作る根粒菌についてはよく知られていますが、それ以外にもたくさんの種類の微生物が、植物内生菌として、植物の中で、植物に病害を起こすことなく、植物と共存しています。(上図左)
根粒菌は空気中の窒素ガスをアンモニア態窒素に変換し(窒素固定)、植物に供給することが知られていますが、植物内生菌の中には、根粒を作らなくても窒素固定をしたり、オーキシンのような植物ホルモンを生産して植物の生長を促進する微生物が知られています。また、植物に植物病原菌への抵抗性を誘導したり、植物病原菌の生育を抑制する内生菌もいます。植物内生菌のこのような働きを利用して作物の生産性を高めるための研究をしています。植物から分離した内生菌の種類や働きを調べるとともに、それらを植物に接種して、植物への生育促進効果を確かめます。(上図右)
植物の中には多様な植物内生菌が生息していますが、一方で、植物に内生できる微生物は限られていて、どうして特定の微生物だけに内生できる能力があるのかについてはよく分かっていません。それらの中で、植物の生育促進に寄与する内生菌の働きを高めることで、持続可能で環境にやさしい農業生産に貢献します。
生物資源科学部 教授 木原 淳一
動物や植物だけでなく、肉眼では見ることのできない微生物も、環境情報のひとつとして光を利用し、環境に適応して生きています。例えば、イネの葉に病気を引き起こすイネごま葉枯病菌は、胞子によって風媒伝搬しますが、この胞子形成は、紫外線によって促進され、青色光によって抑制されることが明らかとなりました。このことから、イネごま葉枯病菌は、青色光の有無によって昼と夜を区別し、紫外線量によって胞子形成量を調節していると考えられています。栽培植物の病害による被害は10%以上にも及ぶことから、植物の病気を防除するために、主に殺菌剤をはじめとした化学防除が行われています。しかしながら、薬剤耐性菌の出現や生態系への影響も懸念されており、新しい防除技術の開発が望まれています。私たちは、植物病原糸状菌が自然環境の中で生きていく上で重要と考えられる光環境応答の仕組みとその意義を明らかにし、これを植物病害防除に役立てるための研究を行なっています。
生物資源科学部 准教授 佐藤 邦明
私は土壌の持つ環境浄化機能を利用した水質浄化技術の開発を行っています。土壌による水の浄化は欧米や途上国で広く行われていますが、地下水汚染や病気の原因になるなど問題もあります。土への水のしみこみやすさなど、土壌の水質浄化能は場所によって異なり、浄化能の低い土壌もあります。
このような問題を解決するため、多段土壌層法と名づけた技術の開発を行ってきました。多段土壌層法は、土壌ブロックを交互に積層しブロック間に粒径が大きく通水性の良い資材を配置した構造を持ちます(前出図)。従来、問題であった目詰まりに対して有効で高速処理が可能となり、一般家庭や公園などで一部実用化されています。これまでの研究から、ブロックサイズを小さくするほど土と水が接触しやすくなり、浄化性能の向上することが示されてきています。そこで、究極まで土壌ブロックを小さくすることをコンセプトに、土壌を造粒した新たな浄化資材を作り出そうとする研究も行っています(上写真)。
生物資源科学部 助教 橋口 亜由未
本研究室では、環境水中の有害有機化合物の除去に関する研究を行っています。たとえば、カーワックスや泡消火剤にふくまれている有機フッ素系の界面活性剤は環境中では分解されず、地球上で長距離を移動し、生態系に悪影響を与えることが知られています。
本研究室では、環境水中に有機フッ素系の界面活性剤を添加して、その溶液に電解質と電極を入れ、電気を流すという簡単な方法で分解実験を行いました。その結果、電気分解法では、環境水中のように多くの有機物を含むような水でも有機フッ素系の界面活性剤がほぼ100%分解され、有効な分解方法の1つを提案しました。
本研究室では、電気分解以外にも紫外線技術や微生物による有害有機化合物の分解や除去技術の開発に関する研究を学生と協力して行っており、豊かな水環境の保全に貢献しています。
生物資源科学部 教授 桑原 智之
フッ素は虫歯予防に有効ですが、その一方で斑状歯という歯に斑点ができる病気も引き起こします。一部の開発途上国では、フッ素を含有する地下水を利用するため、虫歯が少ない代わりに斑状歯が問題になっています。このようなヒトにとって少しなら有用(必須)、過剰だと有害になる元素は環境中に低濃度で存在するため、過剰摂取のリスクを低減するためには、対応する水処理技術が必要になります。
天然温泉など日本の地下水にもフッ素やヒ素などの自然由来の有害イオンが含まれることがあり、利用・排出するためには水処理が必要です。そこで、私たちは複数の金属の含水酸化物を組み合わせた複合含水酸化物に注目し、低濃度の有害イオンを除去するための新しい「吸着剤」の開発に取り組んでいます(写真)。これまでにフッ素とヒ素の吸着剤を開発してきました。これからも、世界中の人々が安心して水を利用できるように貢献したいと考えています。
生物資源科学部 助教 吉岡 有美
雨、河川、湖沼など私達の生活圏には、さまざまな場所に水があります。水がいつ、どこに、どれだけ存在するかを知ることは、持続的な水利用のためには非常に重要です。目は見えませんが、地面の下には地下水が大量に存在しています。地下水は、地球上の海水や氷河などを除いた利用可能な淡水資源の98.7パーセントを占め、河川水の5000倍以上になります。
雨や河川の水などが地面の上にある水(地表水といいます)が浸透した結果、地下水ができます。ときには逆に、地下水が河川に湧出することもあり、地表水と地下水は相互に関係しています。山から海に至るまでの地域の水の関係(循環系)を知ることが、地域にあるさまざまな水の量や質の評価につながっていきます。
そこで、水田など農業地域において、地表水ののうち、どの水がどれだけの割合で地下水に寄与しているかについて、現地での採水や水質分析などを通して評価する研究に取り組んでいます。
生物資源科学部 助教 李 治
近年、様々な高度な環境制御技術(照明、冷暖房、計測、通信など)を温室などに導入して、植物の栽培を行っています。そのため、野菜や果物が周年的に収穫できるようになりました。しかし、環境制御のための設備は、化石燃料や電気エネルギーを大量に消費します。栽培施設で太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用を増やせば、地下資源由来のエネルギー消費量の割合を減らすことができます。
私は太陽電池を使って、温室外の天気条件によって自律的に受光角度を変える自動遮光システムを開発しています。扱っている太陽電池は、半透過型の太陽電池です。この太陽電池は、光を一定の割合で透過させることができます。夏は温室中の温度の上昇を防ぐために適度に遮光することが多いです。遮光資材として半透過型太陽電池を使えば、植物生産と電力生産を両立させることができます。
農業分野で、太陽電池の利用を拡大できれば、地下資源由来のエネルギー消費量の割合を減じつつ、再生可能エネルギーの割合を増やして、持続可能な温室栽培の実現が期待できます。
生物資源科学部 助教 上野 和広
農業を行うためには水が必要です。水は雨として地上に降り注ぎますが、農業の都合に合わせて降ってくれるわけではありません。必要な時に必要な量の農業用水を農地へ供給するためには、水を貯める、運ぶ、取り入れるなどの役割を有する農業水利施設が不可欠です。これまでにたくさんの施設が整備され、農業用水の安定供給を通して農業を支えてきました。しかし、それら施設の多くは戦後の食糧増産時期や高度経済成長期に整備されたことから、長期間の供用に伴う老朽化が現在問題になっています。
こうした課題に対処するため、施設の状態を把握するための診断、将来の老朽化を食い止めるための予防対策、老朽化した施設の機能を回復するための補修・補強に関連する技術開発を行っています。農業を支える農業水利施設の保全を通し、農業の発展や豊かな農村地域の形成へ貢献したいと思っています。
生物資源科学部 講師 木原 康孝
すべての人が「土」に支えられた空間で生活しているにもかかわらず、汚れてしまう、洗練されていない等々「土」のイメージはあまり良くありません。悪い印象のみならばまだしも、本当は「土」が建物だけでなく、縁の下の力持ちとして地域環境を支えている「かけがえのない地域の財産」であることを理解している人も残念ながら多くありません。写真のような地域で農業を含む地域の様々な循環(水・物質・熱)を研究していると、土が環境問題の「扇の要」の役割を果たしていることを日々実感しています。
近年、豪雨による災害が頻発しています。地域に降った雨は土の中に浸透し、河川へ流出していきます。このサイクルの中で土が限界を超えると様々な災害が起こってしまいます。そのため日頃から自分の地域に降った雨の経路を理解しておく必要があります。また、土の重要性がなかなか理解してもらえない理由はあまりにも身近な存在ということと、土の中の現象は目に見えないということが挙げられます。視覚化するツールとしてGIS(地理情報システム)を活用します。地域の等高線図を眺めても地形を把握することはなかなか難しいですが、GISならば3Dで表現することも可能です。これによって地域における土の中の水の動きを理解することが容易になります。
生物資源科学部 助教 佐藤 真理
高度経済成長期に敷設された埋設管は老朽化し耐用年数を超過しつつあり,埋設管の適切な補修と維持管理が必要となっています.埋設管の破損も問題となっており,降雨時や地下水位上昇時に,浸透により破損部へ周囲地盤の土砂が流出し,地中空洞が形成されます.地中空洞が拡大すると最終的に表層で陥没事故が引き起こされますが,陥没事故は人的経済的に大きな被害をもたらします.陥没事故を防ぐために,現在では路面下レーダー探査による地中空洞の発見と埋め戻しが対策として行われています.しかしながら発見された空洞にどのような処置を行うかという点に関しては,深さや大きさによる単純な評価がなされており,新たな評価手法の構築が必要となっています.本研究では模型実験(図1・図2)により,空洞形成状況を様々な条件で検討し,実験結果を体系的に整理してまとめることで,実務で用いることのできる地中空洞危険度評価指標の構築を目指しています.
生物資源科学部 助教 林 昌平
島根県の宍道湖で強いカビ臭が発生し、シジミなどがカビ臭くなる事件がありました。調査すると、ある特定のシアノバクテリアがカビ臭物質「ジェオスミン」を作っていました。しかし、同じ種でもカビ臭を作らない株も存在し、宍道湖では両者が混在していると考えられます。現在、ジェオスミン生産シアノバクテリアとジェオスミン非生産シアノバクテリアを区別して調べる方法の研究を行っています。
また、三瓶ダムでもカビ臭が問題になっています。三瓶ダムではジェオスミン以外に、「2-メチルイソボルネオール」というカビ臭物質も検出されています。三瓶ダムでは、表層ではシアノバクテリアが、底層では放線菌がカビ臭物質を生産していることがわかってきました。現在、それぞれのカビ臭物質生産者への効果的な対策方法を調べる研究を行っています。
湖やダムでのカビ臭発生は島根県だけでなく、世界中で問題になっています。カビ臭生産微生物を調べることで、湖やダムでカビ臭が発生する場所や時期を予測でき、最終的にカビ臭を制御する手法がわかれば、魚介類の生産や飲料水の確保の観点から社会に貢献できると考えています。
生物資源科学部 教授 上野 誠
地球温暖化など、環境が大きく変化している中で、食料の安定供給は重要となります。食料の安定供給には、安定した農作物栽培が重要になりますが、それらの安定供給を妨げる要因として、病害虫の発生があります。また、病害虫を防除する農薬の過度な使用は、農薬が効かない耐性菌を出現させてしまいます。
私たちの研究室では、それらの問題を解決すべく、地域の未利用資源や微生物を用いた環境に配慮した病害防除に関する研究を進めています。特に、これまでは、病害防除に利用できる植物成分の解析や微生物農薬として利用可能な微生物の探索を行ってきました。また、学生や市民への病害防除の重要性を伝える講演等も実施しています。
今後、研究を発展させることにより、安定的な農作物生産のための技術の普及に努めていきます。
生物資源科学部 准教授 泉 洋平
昆虫の季節適応、特に低温に対する耐性について様々な角度から研究を行っています。昆虫にとって冬の寒さは生死に関わる問題となります。昆虫はそれぞれ自分たちが冬を乗り越えるのに適した発育段階をもっていて、例えばカブトムシは幼虫、モンシロチョウは蛹、テントウムシは成虫で冬を越します。寒くなるまでに決まった発育段階になれなかったものは冬を越すことが困難になります。
昆虫がどうやって寒さに耐えるのか、どのくらいの寒さに耐えることが出来るのか等の研究は、私たちの生活において何の役にも立たないように見えます。しかし、どのくらいの寒さに耐えることが出来るのかが明らかになれば、日本のどのあたりまでその昆虫は分布が可能なのか、今後温暖化が進んだ時にどのあたりまで分布を拡大することが出来るのか、等の予測をすることができます。それにより、農業害虫や有害な害虫に対する防除に役立ちます。
生物資源科学部 准教授 山下 多聞
■森林の基礎生産:森林といえば樹木が主役です。樹木がなければ森林じゃない。樹木があってこその森林。みなさんご存じのように樹木など緑色植物は光合成をします。光合成は十分な光の届く樹冠に広がる葉で行われます。葉は、そびえ立つ幹、そして幹から伸びる枝にみごとに配置されています。しかし、幹、枝、葉を支えるのは根です。根から水や養分が上空の葉に送られます。たとえ熱帯林の高さ50mを超えるような巨木でも根から葉へと送られます。根は、土壌中に存在する水および無機物質を植物体内へと取り込みます。根が取り込む水のもとは降水、無機物質のもとは土壌鉱物の風化産物です。緑色植物はこれらと大気中の二酸化炭素から有機物を作り出します。光合成で作られた有機物が地球生態系の究極の駆動力(ドライビングフォース)になります。
■生態系での再循環:光合成で作られた有機物も老廃物は切り離して地表に捨てられます。枯葉や枯枝です。枯葉や枯枝は地表で土壌動物や土壌微生物によって分解されます。この過程で枯葉枯枝から大気に二酸化炭素が放出されます。また、この過程で枯葉枯枝から土壌に腐植が供給されます。腐植は炭素だけでなく、窒素なども含む難分解性物質です。難分解性有機物である腐植は土壌中に蓄積します。土壌の表層部分は腐植が蓄積し暗褐色に染まります。しかし、腐植は土壌微生物により徐々に分解され腐植を構成する無機物質を土壌中に放出します。放出された無機物質は表層土壌に展開している根系に吸収され再び光合成に利用されます。
■腐植はどこへ:表層土壌はもちろん重要です。何故なら、多くの腐植が蓄積し、多くの根が分布し、多くの土壌生物が活動しているからです。では、森の土の深いところでは何が起きているのでしょうか。知りたくないですか?
生物資源科学部 助教 吉岡 秀和
魚や農作物など,人間の食料となる生物は生物資源と呼ばれています.また,生物資源は様々な生態系を構成する一因として重要な役割も担っています.人間は,自然環境や生態系に介入しながら生物資源の管理を行っています.では,どのような管理が「最適」なのでしょうか?そもそも,「最適」とは一体どういう事を指すのでしょうか?こうした疑問は,決して簡単に答えられるものではありません.
私達は,「最適」な生物資源の管理手法とはどのようなもので,どうすればそれを実現できるか,という問題意識を持ちながら,数理科学の見地から上述の疑問への回答を目指す研究を進めています.すなわち,生物資源の成長や個体数の変動,生物資源が棲む環境の変動,そして人間による管理のあり方を,微分方程式等の様々な数学的ツールを駆使して解析しています.とくに,最適制御理論や確率微分方程式といった,自然界におけるランダムで複雑な生物現象を比較的簡素に記述できるツールに着目し,数学解析や数値シミュレーションを行っています.また,島根県斐伊川を研究対象地として,「清流の女王」であるアユの成長や河川環境の変動について,漁業協同組合と協力しながら集中的な研究を進めてます.
生物資源科学部 准教授 倉田 健悟
河川と海の境界である汽水域では、河川から運ばれる陸起源の有機物、海藻類由来の有機物、水中の植物プランクトンなどの複数の餌資源があるため、動物の餌利用が複雑です。陸上植物の光合成で作られる有機物と、水中で光合成を行う植物プランクトンの有機物では炭素安定同位体比が異なり、これらを餌とする動物の炭素安定同位体比に反映される性質を用いて、宍道湖~境水道の各地点で餌となる物質と底生動物の食物連鎖を調べてみました。
宍道湖と中海の両方で採集されたヤマトシジミ、巻貝のカワグチツボ、カワザンショウガイは、炭素安定同位体比の値の範囲が広いことが分かりました。宍道湖から中海まで幅広い塩分に対応して、水中の懸濁物や湖底の堆積物の炭素安定同位体比が変化していたことから、懸濁物をろ過して摂食するヤマトシジミや堆積物を餌とする巻貝の値も範囲が広くなったと考えられます。宍道湖や中海の底生動物は、その場所の影響を強く受けていると言えます。湖岸の改変や流動の微妙な環境変化が、食物連鎖を通じて底生動物に影響する可能性を調べていく必要があるでしょう。
生物資源科学部 助教 藤巻 玲路
森林に降り注ぐ雨は、葉や枝に触れ、一部は幹をつたって地面に到達し、土壌に浸透して行きます。そうして地中をゆっくりと流れ、やがて湧き出て川に流れます(前出図上)。この間にちりやほこりは取り除かれ、また水に溶けている成分にも変化がおきます。このように、森林には降ってきた雨水の水質を調整する機能が備わっていますが、この機能は特に土壌の中で強く働きます。
森の土壌に目を向けると、落ち葉や枯れ枝が積もり、それらをエサや住み家として利用するする動物(ミミズやトビムシなど)や微生物(菌や細菌)が数多く生息していて、「生態系」を作り上げています(前出図下)。この土壌の生態系が、森林の水質調整の機能にどのようにかかわっているのかを研究しています。
森林には、水質調整の他にも、木材生産はもちろん、生物多様性の保全や治山・治水など、さまざまな機能があります。しかし、日本には管理が行き届いていない人工林が増え、森林の持つ機能の劣化が危惧されています(上図)。森が持つこれらの機能を健全に維持させるにはどうすればよいのか、森の管理方法を考えることが課題です。そのためにも、森が持つ機能がどの様に発揮されるのか、そのメカニズムを解明することが重要です。
生物資源科学部 准教授 橋本 哲
日本全国で見ると、年間使用量のうちおよそ90%は、河川から取水しています。河川流量は降水により増減します。豪雨により大洪水となれば災害が発生します。長期間の無降雨により渇水となります。私たちの生活や農業などの水利用パターンは大きく変化しませんから、河川の水量は一定であるほど好都合です。森林流域には洪水や渇水を緩和して流量の変化をならす作用があります。私たちは、この基盤のもとに水利用や治水の計画を立てているのです。島根大学の三瓶演習林に小さな試験流域を設けて、この小流域からの渓流流量、降水量などを観測し、流域への降水量から渓流流出量や蒸発散量を推定する方法を通してその過程の特徴を掴んでゆきます。地域の貯水ダム流域では、取水に必要な水量の確保や貯水池の規模に対して、この水源流域の森林流域がどのように関係しているのかを量的に評価します。植生や土壌がダイナミックに変動する森林流域において、水資源獲得や洪水災害防止の機能をどのように発揮させるのか?大きな課題です。
生物資源科学部 准教授 巣山 弘介
よく「農薬を使うと土が死ぬ」と言わますが、本当にそうなのか? 単なる「思い込み」ではないのか? そんな疑問を持った私は、それを科学的に評価する研究をしています。その一つとして、植物の繊維質(セルロース)を分解する微生物のはたらきや種類に農薬が影響するのかを調べてきました。そして、例えば図2の③や④のセルロースは①や②に比べて分解量が少なく、入り込んだ微生物の種類も違っていることが分かりました。ただ、農薬にも様々な種類があり、微生物のはたらきも様々なので、「農薬を使うと土が死ぬ?」について明確な答えを出せてはいません。
日本において農薬とは「農薬取締法に基づく登録を受けたもの」と言えます。その登録を受ける過程で人間や水産動植物等へのリスクは評価されていますが、土壌微生物へのリスクは評価されていませんので、上のような研究の意義があります。一方、登録の過程でどんなことが評価済なのかを知った上で研究することも大切ですから、学生には講義で詳しく話します。
初年次教育科目
本学の地(知)の利を生かし、斐伊川流域や三瓶山で野外実習を行います。ここには、森林、土壌、汽水域といった生態系サービス(自然の恵み)、農地や地域資源の保全と持続的利用、河川構造物や水処理施設といった要素が揃っており、環境共生型社会を構築する対象地域として絶好のフィールドです。野外調査に加えて大学キャンパス内でも様々な実習を行います。 Read More
環境共生科学入門(前期)
環境共生科学概論(後期)
This is what we are.
2年次に、特色ある4つの教育コース(環境生物学・生態環境学・環境動態学・地域工学)を選択します。
自然環境の多様な生物を科学する
人と自然の共存や生態系の保全を目指す
地域資源循環型社会の構築を目指す
地域資源の有効活用を目指す
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